タニタの考える健康
2022.05.16
運動不足気味で脂肪がついてきていて、そろそろダイエットに取り組もうと考えている方は多くいらっしゃるでしょう。しかし、一口に「脂肪」といってもいくつか種類があり、それぞれからだへのつき方が異なります。効率的に脂肪を落とすためには、種類ごとの性質や落とし方のポイントを知っておくことが重要です。 中でも、人体の脂肪組織の大半を占めるとされているのが「皮下脂肪」です。皮下脂肪とは、具体的にどのような脂肪を指すのでしょうか。 ここでは、皮下脂肪の概要や他の脂肪組織との違い、皮下脂肪を落とす具体的な方法についてご紹介します。
皮下脂肪とは、文字通り皮膚の下にあり、比較的体の表面に近い部分に蓄積する脂肪のことを指します。二の腕やお腹周り、太ももの裏など、日頃あまり動かすことがない部位につきやすい性質があります。体温維持などの重要な役割を持ち、時間をかけて少しずつ蓄積されていくという特徴から、一度ついたらすぐに落とすのが難しい脂肪でもあります。
体中どこにでも蓄積する脂肪ですが、特に下半身に集中してつきやすく、皮下脂肪が多い体型は洋ナシ形肥満とも呼ばれます。表面に近い部分につくことから、からだつきやプロポーションへの影響が大きいです。
また、女性ホルモンの働きにより、男性よりも女性の方が蓄積しやすい点も皮下脂肪の特徴です。部位による皮下脂肪のつき方のバランスにも、性差が大きく関係します。
人間の体内にたまる脂肪組織を表す名称には、皮下脂肪だけではなく、体脂肪や内臓脂肪があります。具体的に、皮下脂肪とは何が異なるのでしょうか。それぞれの言葉の意味をご紹介します。
体脂肪とは、体に蓄えられている脂肪を総称する言葉で、内臓脂肪や皮下脂肪も体脂肪の一種です。エネルギーを蓄えておいたり、体温を保ったり、性ホルモンを分泌したりといった役割を持ちます。そのため、体脂肪もからだにとって必要な組織ですが、蓄えられすぎると見た目や健康に悪影響を及ぼす恐れがあります。
見聞きすることが多い「体脂肪率」という言葉は、体重に占める体脂肪の割合を表したものです。体脂肪率(%)は「体脂肪量(kg)÷体重(kg)×100」という計算で導かれます。
体脂肪率の標準範囲は性別や年代によって異なるので、年齢や性別別に適切な体脂肪率を可視化した、判定表を使ってチェックすることが大切です。
内臓脂肪とは、内臓の周囲に蓄積する脂肪のことです。胃や腸の周りにつくことから、内臓脂肪が蓄積するとお腹が張り出し、その見た目からリンゴ型肥満と呼ばれる場合もあります。全身のからだつきではそれほど変化がないように思えても、実は内臓脂肪が蓄積していたということもあるため注意が必要です。
内臓脂肪は女性よりも男性の方がつきやすい傾向にあるとされていて、皮下脂肪に比べると「短期間で変化しやすい」のも特徴です。
また、内臓脂肪は代謝して血管に入り込みやすく、脂質異常症や動脈硬化などのリスクを高めることで知られています。脂質異常症とは、血中の脂質の値が基準値から外れている状態で、動脈硬化の促進に関連します。
心臓病や脳卒中などになりやすい「メタボリックシンドローム(メタボ)」の起因ともされているので、体脂肪の中では特に注意しなければいけません。
皮下脂肪が増えてしまう原因は、主にエネルギー(カロリー)の摂りすぎと運動不足です。1日の間に消費する以上にエネルギーを摂取した場合、使われずに余ったエネルギーは皮下脂肪や内臓脂肪としてからだに蓄積されます。余ったエネルギーがどちらの脂肪として蓄積されるかは、性ホルモンの影響や加齢変化の影響など複合的な作用によって変わるため、明確な判断はできません。
しかし、アルコール摂取による過剰なエネルギーは肝臓に蓄積しやすく、内臓脂肪の増加に悪影響があると言われています。
摂取するエネルギー量が年齢や性別から見て適切だったとしても、椅子に座りっぱなし、運動をほとんど行わないなど、生活習慣によっては余分なエネルギーとして蓄積されるので注意が必要です。
また、エネルギーの過剰摂取だけでなく、糖質の摂りすぎやタンパク質不足といった「栄養バランスの乱れ」も脂肪を増加させる要因になります。
皮下脂肪は、エネルギーの摂りすぎや筋肉量・運動量の減少、栄養バランスの乱れなどが原因で、長い期間をかけて少しずつ蓄積されていく体脂肪です。そのため、内臓脂肪のように短期間で落とせるものではありません。皮下脂肪を落としたいと思った場合は、生活習慣そのものを大きく見直す必要があります。
では、皮下脂肪を落とすためにはどのような点に注意すれば良いのでしょうか。ここからは、皮下脂肪を落とすために意識したいポイントをご紹介します。
皮下脂肪を落としたい場合、食事によるエネルギーの過剰摂取を避ける必要があります。糖質や脂質の量に注意しながら、必要以上にエネルギーを摂りすぎないように心がけましょう。
エネルギーの過剰摂取は避けなければいけませんが、エネルギー摂取量を減らそうとして過度な食事制限を行うのは厳禁です。しっかりと栄養が摂れていないと筋肉量が落ちたり、飢餓を察知した体がエネルギーを蓄えようとしたりするため、逆に脂肪がつきやすくなってしまいます。
腹八分目を目安にして、1日3食バランスの良い食事を摂ることが大切です。特に、タンパク質を始め、必要な栄養素に留意して食事を作ると良いでしょう。脂っこい食事や、甘い物、アルコールの過剰摂取(『控えめにしたい3つの「あ」』と言います)を控えて、豆腐や野菜、きのこ類といった低カロリーでヘルシーな食材を意識して食べるのもおすすめです。
ゆっくりとよく噛んで食べると、満腹中枢が刺激されて満足感を得られるので、食べ過ぎを防ぐことができます。
食事を口に入れる順番は、サラダなどの食物繊維が豊富なもの、お肉などのタンパク質、白米などの炭水化物という順番にすると良いでしょう。腹持ちが良くなり食べ過ぎを防ぐことにつながりますし、血糖値の上昇が緩やかになり、糖尿病になりにくく血管の老化を防ぐと言われています。
脂肪を落とすためには、食生活の改善と併せて運動を取り入れることも重要です。運動の際に意識したポイント2つを確認しておきましょう。
基礎代謝量が多くなるほど脂肪を効率的に落とせるため、筋トレを取り入れるのがおすすめです。下半身などの大きな筋肉から鍛えていくと、基礎代謝量をより効率的に増やせます。
ただし、運動習慣が全くない方が筋トレを取り入れるのは、なかなかハードルが高いかもしれません。最初から特別なトレーニング器具を使用する運動を行うのではなく、スクワットやプランク、腕立て伏せといった、器具なしでも取り組めるトレーニングから始めてみてください。その場ですぐに行えるトレーニングの方が、習慣化しやすいはずです。
筋トレだけでなく、ランニングやジョギングを行うのも効果的です。ランニングやジョギングといった有酸素運動と筋トレを組み合わせることで、さらに効率的に脂肪を燃焼させられます。
こちらも筋トレと同じく、無理のない範囲から徐々に取り入れていくと良いでしょう。
皮下脂肪が蓄積する一般的な原因は、運動不足や食べすぎ、栄養バランスの偏りです。一度蓄積した皮下脂肪はすぐに落とすのが難しいため、日頃から食生活や運動習慣を意識する必要があります。
特に、交通機関が発達し、デスクワークで椅子に座っている時間も増えた近年は、食事で摂取するエネルギー量が簡単に消費エネルギー量を超えてしまうことが考えられます。皮下脂肪は長い時間をかけて蓄積するので、自分はまだ大丈夫と考えるのではなく、積極的に運動習慣や食生活の改善を心がけるのがおすすめです。
すでに皮下脂肪が気になる方はもちろん、できるだけ皮下脂肪を溜めたくないという方も、食事や運動といった生活習慣に注意してみてはいかがでしょうか。
参考文献:
福永 哲夫,金久博昭,「日本人の体肢組成 (現代の体育・スポーツ科学)」,朝倉書店,1990年
宮崎滋, 「肥満症診療ガイドライン2016」,日本肥満学会,2016年
日本肥満学会,「肥満・肥満症の指導マニュアル」,医歯薬出版,2001年
L・キャスリーン・マハン他, 「栄養ケアプロセスを目指して 栄養学と食事療法大事典」, ガイアブックス,2015年
安藤雄一,「速食いと肥満の関係 -食べ物をよく『噛むこと』『噛めること』」,厚生労働省e-ヘルスネット,2020年
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-10-002.html
大河原 一憲,「加齢とエネルギー代謝」,厚生労働省e-ヘルスネット,2019年
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-02-004.html
株式会社タニタ,「タニタのロハスなダイエットのすすめ」,扶桑社,2012年
この記事はタメになりましたか?
人気記事ランキング
RANKING人気記事ランキング
RANKING