運動
2022.10.04
激しい運動をしたり、普段はあまり使わない筋肉に負荷をかけたりすると起こる、筋肉痛。誰もが一度は経験したことがある痛みといっても過言ではないでしょう。 しかし、具体的にどのようなメカニズムで発生するのか、ご存知ない方も多いのではないでしょうか? ここでは、そんな筋肉痛が発生する原因や種類、対処法についてご紹介します。
筋肉痛は、「筋肉の耐久力を超えた運動」をすることに起因して発生します。負荷の大きな運動や長時間の運動、もしくはその両方を行って筋肉が耐えられるレベルを超えると痛みが生じるのです。
多くの場合、運動中の筋肉は、縮む方向に動く「短縮性収縮(たんしゅくせいしゅうしゅく)」と伸ばされる方向に動く「伸張性収縮(しんちょうせいしゅうしゅく)」を繰り返しています。
このうち伸張性収縮は、筋肉痛を引き起こしやすい運動であるとされています。具体的には、重いものを下ろす、階段を降りる、坂道を下るなどといった動作が該当します。
筋肉痛は、「即発性筋肉痛(そくはつせいきんにくつう)」と「遅発性筋肉痛(ちはつせいきんにくつう)」の2種類に大きく分けられます。それぞれの特徴やメカニズムを見ていきましょう。
筋肉に強い負荷がかかる運動をすると、汗をかいてからだの水分が失われたり、筋肉が緊張する状態が続いたりします。それが原因で血行が悪くなると、筋肉の代謝物である「水素イオン」が蓄積しやすくなります。
この水素イオンが筋肉を刺激し、運動中や運動直後にかけて痛みが生じた状態が、即発性筋肉痛です。運動をやめると徐々に消失して、痛みはそれほど長くは続きません。
一方の遅発性筋肉痛は、運動後数時間から数日後にかけて起こる痛みで、一般的にいわれる筋肉痛はこちらのことを指します。
発生する原因は諸説あり、現在も研究が続けられていて、まだ完全には解明されていません。近年主流となっているのは、運動時に筋線維(筋肉を構成する細胞)に小さな傷がついて炎症反応が起こるために遅発性筋肉痛が起こるという説。
損傷した筋肉の細胞を分解、回復する過程で、痛みの原因となる物質が生成されるのです。さらに、伸張性収縮によって筋肉の痛みを感受する器官の働きが活発になり、痛覚過敏の状態になることも理由のひとつだといわれています。
なお、少し前までは「筋肉痛の原因は乳酸という疲労物質が筋肉に溜まること」と考えられていました。しかし、最近の研究で乳酸は疲労物質ではないことがわかり、認識が改められています。 ここからは、遅発性筋肉痛の疑問や対処法について詳しくご説明していきます。
「年齢を重ねると筋肉痛を感じるタイミングが遅くなる」という話は、多くの方が耳にしたことがあるでしょう。実際に体感している方も多いかもしれませんが、医学的には、年齢と筋肉痛の発生が遅くなることの関係について断言されていません。
数字的な加齢よりも、からだを動かす頻度が減ったり、若いときよりも激しい運動を行う機会が少なくなったりすることが理由ではないかと考えられています。つまり、若い方でも日頃の運動習慣がほとんどない場合は、筋肉痛が遅れてやってくるようになる可能性があるのです。
また、以下のような要素は筋肉痛の“程度”に影響を与えるといわれています。
・性別
女性は、男性よりも筋肉の損傷が起こりにくい傾向にあります。エストロゲンという女性ホルモンに、細胞膜を保護する働きがあるからだと考えられています。
・からだの部位
腕よりも脚のほうが、筋損傷が起こりにくいとされています。これは、普段から脚のほうが伸張性収縮を伴う動作を多く行っていることが理由だと考えられます。
・年齢
筋肉痛の発生の遅れと数字的な年齢は因果関係がないとご紹介しましたが、10歳未満の子どもと高齢者は、それ以外の年代に比べて筋肉の損傷が小さいことがわかっています。ただし、この原因はまだ明らかになっていません。
筋肉痛は、基本的に時間の経過とともに解消されるものです。運動後に痛みが出たら、睡眠を十分にとるなど、しっかりからだを休めてください。
マッサージによる血行促進やアイシングも対処法としてよく挙げられますが、これらの痛みを和らげる効果については、現段階でははっきりと解明されていません。
なお、痛みが残っているうちは、無理にトレーニングなどは行わないでください。特に痛みがある部分の筋肉のトレーニングは、最低でも48時間は間隔を空けて行うことをおすすめします。
なぜなら、筋肉に負荷を与えてから48~72時間ほどの休息の間に、筋線維が大きくなるからです。この現象は「超回復」といわれ、筋肉を大きくするには欠かせないフローです。この超回復の間は、別の部位をトレーニングするといいでしょう。
筋肉痛を完全になくすことはなかなか難しいですが、日頃の行動や運動前後の工夫で、痛みを抑えるように努めることはできます。
筋肉痛は、慣れない“伸張性収縮を伴う運動”に取り組むことによって筋肉に負荷がかかり、筋線維が損傷することで発生すると考えられます。筋線維は使わないと細くなり、ちょっとした負荷でも損傷しやすくなります。
しかし、伸張性収縮を繰り返すことで、筋損傷は起こりにくくなります。例えば、久しぶりにスクワットをすると太もものあたりが筋肉痛になりますが、1週間に1回程度のペースでかつ同じ強度で繰り返し継続していると筋肉痛は起こらなくなるのです。
そのため日頃から運動する習慣をつけ、筋肉を動かしておくことで、痛みを抑えることにつながります。
筋線維の損傷を軽減するには、運動でかかる負荷を少しずつ増やしていくことも効果的です。
いきなり強度の高い伸張性収縮を伴う運動を無理に行うのではなく、まずは準備運動やストレッチなどのウオーミングアップを必ず行いましょう。筋肉痛だけではなく、ケガを防ぐためにも重要なステップです。
筋肉痛を起こしたくないという方におすすめの運動は、自転車です。自転車を漕ぐ運動は短縮性収縮がメインで、筋肉痛につながりやすい伸張性収縮はほとんど伴いません。
つまり、筋肉痛のリスクを抑えながら大腿筋を大きくできるのです。また、有酸素運動でもあるので、脂肪を減らしたい方にもぴったり。通勤や休みの日などに取り入れてみてはいかがでしょうか?
また、タニタの女性専用フィットネス「タニタフィッツミー」では、筋肉痛や肉離れが起きにくい設計の油圧式マシンを採用しています。ジムに通うことを検討されるなら、ぜひお役立てください。
筋肉を増やしてからだづくりをしたい方や、筋肉を減らさないように健康維持やダイエットをしたい方は、運動によって発生する筋肉痛とある程度は向き合う必要があるかもしれません。
しかし、筋肉痛が起こる動作を知っていれば、翌日の痛みを調節することも可能です。自分に合った動作を選び、対処法や痛みを抑える方法を試してみてください。
また、運動を継続すれば筋肉痛が生じにくいからだをつくることが可能ですが、それにはモチベーション維持も重要なポイントです。
ぜひタニタの体組成計で筋肉量や筋質をはかり、日頃から筋肉の成長を確認することも習慣にしてくださいね。
株式会社タニタ 開発部 生体科学課 佐藤 航大
2021年入社。主に新商品のアルゴリズム開発を担当。 また、学生時代はスポーツ科学を専攻。 その知識を活かし、競歩の日本代表選手、プロサッカーチームやプロバスケットボールチームなど、 さまざまな競技のアスリート支援に関する業務も担当している。
参考文献:
R. M. Crameri,P. Aagaard,K. Qvortrup,H. Langberg,J. Olesen,M. Kj?r,「Myofibre damage in human skeletal muscle: effects of electrical stimulation versus voluntary contraction」,The Physiological Society,2007年
水村和枝,「筋・筋膜性の痛みにおける神経栄養因子の働き」,第71回日本自律神経学会総会,2019年
滝野彩,廣瀬立朗,桜井智野風,「エストロゲンは骨格筋損傷の修復に良い影響を及ぼす」,桐蔭スポーツ科学 2020,2020年
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