高齢者の運動能力と交通安全 ~高齢者の交通事故を減らすために~

2025.06.24

秋の交通安全運動出発式の様子(2023年9月21日)

高齢者の交通事故を減らすため、新潟県警と新潟県内の各市町村は高齢者向けの交通安全活動に力を注いでいます。その取り組みの一つ「交通安全教室✕健康教室」は、これまでに100回以上開催され、参加者の数は延べ3000人を超えています。 同教室ではタニタの運動機能分析装置「zaRitz(ザリッツ)」を活用していただいております。 今回は「交通安全教室✕健康教室」の企画の立案や運営などに携わる新潟大学の村山敏夫准教授に、高齢者の健康・運動機能と、交通安全活動の取り組みの関係性などについて聞きました。 

プロフィール

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村山 敏夫 先生
新潟大学教育研究院 人文社会科学系 教育学系列 准教授
教育学部 准教授
工学部 工学科 准教授
 

生体情報の分析を専門とし、幼児の健康教育や高齢者の介護予防、新潟県内の高齢者の健康格差や交通安全に関する研究に従事。加えて自動車関連企業や交通科学関連団体などが取り組む交通安全活動にも協力している。


新潟県警察に協力し、交通安全活動に取り組む

――まず、新潟県警察との交通安全活動がスタートしたきっかけについて教えてください。


新潟県警と交通安全活動に取り組むことになったのはいまから10年前の2015年のことです。「高齢者の交通事故が減らない」と私の研究室に相談があったのがきっかけです。
声がかかった頃は、交通安全に関する研究にはまだ着手していませんでしたが、専門である生体情報や運動機能などの研究を交通事故抑止に活かせるのではないかと考え、一緒に取り組むことになりました。


当時、新潟県内の交通事故件数は減少してきていたのですが、高齢者の交通事故件数は横ばいの状況でした。交通事故を減らすためには、高齢者の交通安全意識向上が急務だったのです。

村山先生が話している様子

ただし、高齢者は日々様々な教室やボランティア活動、運動などで何かと忙しいため、単純に「交通安全教室」を増やすだけでは参加してもらえないのではないかという懸念がありました。そこで「健康教室と交通安全教室を一緒に開催するというスタイルにすれば参加しやすくなるのではないか」と提案しました。
こうした経緯でスタートしたのが『交通安全教室✕健康教室』です。

 

当時、大学と県警の連携による交通安全活動はとてもめずらしく、NHKなどのテレビ局や新聞といった複数のメディアにも取り上げられたほか、2018年には警察庁長官賞、2024年には内閣府オープンイノベーション大賞審査員特別賞を受賞しました。


『交通安全教室✕健康教室』でzaRitzを活用した運動機能測定を実施

――『交通安全教室✕健康教室』ではどのようなことをするのでしょうか?


『交通安全教室✕健康教室』は2016年から新潟県内の市町村でスタートし、年間約10カ所で実施しています。これまでに延べ3,000人以上が参加しており、新潟県の交通安全教室の定番のスタイルといっても過言ではありません。2025年は開始から10年という節目の年となります。


『交通安全教室✕健康教室』ではタニタの運動機能分析装置『zaRitz』を使った体力測定や、歩行シミュレーターを使った横断歩道の危険性の体験を行います。
歩行シミュレーターは三面スクリーンにCG(コンピュータグラフィックス)の模擬道路を再現し、実際にその場で足踏みして道路横断を体験できる装置で、自分の歩行能力や判断能力を確認できます。
体力に自信を持っている高齢者でもシミュレーターの中では事故に遭うことが多いのですが、その結果と体力測定の結果を照らし合わせると、体力得点の結果の低い人ほど事故に遭いやすい傾向があることがわかっています。

▲佐渡市での交通安全教室✕健康教室の様子(2019年7月17日)

体力測定とシミュレーターを体験した後は、新潟大学の学生たちが考案した体操と、学生による健康維持と交通安全に関する講話を行います。講和の中では、自分たちの体力を正しく認識せず、「自分は元気!」と思っている人ほど交通事故に遭ってしまうことや、交通事故を起こさないためには、頭やからだを鍛えることがとても大事であることなどをお話ししています。


高齢者の健康・運動機能と、交通事故の深い関係

――高齢者が交通事故に遭いやすい理由について、健康・運動機能の面から教えてください。


高齢者が交通事故に遭いやすい理由は、とても複雑です。
加齢による運動機能の低下が、認知機能や運転技能の低下につながる可能性はあります。
また、心電図を使った研究では、運動習慣の有無によってブレーキやアクセル、方向指示器の操作に違いが見られました。複数のタスクをスムーズにこなすことができず、注意力が低下することで事故につながりやすくなるようです。
やはり、単に「体力があるかどうか」だけではなく、様々な場面で自身のからだをコントロールする能力と、そして慢心せずに自分の状況を理解することが交通安全においてより重要となります。

▲運転実験の様子(2023年9月9日)

いまからできる!普段から意識したいポイント

――交通事故に遭わないようにするため、高齢者や中高年層が健康面やその他の点で普段から意識すべきポイントついて教えてください。


高齢者が交通事故に遭わないようにする対策は“体調管理”“想像力”の二つです。
やはり体調に気を付けること、そして自分のからだと心の状態にしっかり向きあうことです。自分の今の状況を、客観的に理解できるようにしていただきたいと思います。

例えば、「急いでいる」時に焦らずに「急いでいる」と自覚し、「焦らないようにしよう」と意識すること。「自分は注意しなくてはならない」という意識をもちましょう。
先ほど「zaRitzの体力得点が低い方は、歩行シミュレーターの中でも事故に遭いやすい」とお話ししましたが、交通事故のいちばんの原因は慢心や過信です。
健康第一なのはもちろんですが、「自分は体力に自信があるから大丈夫」と思わずに、常に「事故に遭うかもしれない」と危険を意識して行動することが大切です。

▲秋の交通安全運動出発式の様子(2023年9月21日)


様々な視点をもって、交通安全に向けて取り組み続ける

――交通安全に向けた取り組みへの想いや、今後の展望について教えてください。


交通事故の死者数を実質ゼロにする『ゼロ・フェイタリティ』をキーワードに、交通安全に向けた取り組みを進めています。この目標の実現に向けて、交通事故を抑止するためには総合的な要因の整理や、それを見直すための取り組みを検討していく必要があると考えています。
これからは大学と、健康企業や自動車メーカーなど異分野との連携を通じて、「交通安全」という視点で何ができるのかを一緒になって考え、新たな取り組みを進めていきたいと考えています。

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