タニタの考える健康
2022.12.26
健康診断で注意を受け、初めて意識する方も多い中性脂肪値。中性脂肪値が上昇する=健康によくなさそうだ、というイメージはあっても、そもそも中性脂肪にどんな性質があって、中性脂肪値が高いと体にどのような支障が生じるのかまでは、あまり知られていません。 ここでは、そもそも中性脂肪とはなんなのかを解説するとともに、中性脂肪とコレステロール値の関係、中性脂肪値を減らすために心がけたいポイントなどをご紹介します。
INDEX
中性脂肪とは名前のとおり脂肪の一種で、英語ではトリグリセリド(トリグリセライド、TG)と呼ばれる、血液中の脂肪成分のことです。体内に最も多く存在する脂肪成分であり、糖質の不足を補い、体を動かすための大切なエネルギー源のひとつです。食事から摂取した脂肪は、直接血液に溶けることはなく、小腸や肝臓で合成され全身を巡ります。
また、エネルギーとして消費されなかった中性脂肪は、皮下脂肪となって体温を維持したり、内臓脂肪となって内臓を正常な位置に保って保護したりする役割を果たします。
中性脂肪(トリグリセライド)の基準値は、血液中の中性脂肪の値が空腹時で30~149mg/dl。中性脂肪が増えすぎた状態、具体的には血液中の値が150mg/dl以上になった場合は、「脂質異常症(高トリグリセライド血症)」とされます。
中性脂肪が増える主な原因は、「食べ過ぎ」や「運動不足」などの生活習慣です。脂質の摂り過ぎが原因だろうと考えている方も多いですが、糖質の摂り過ぎも中性脂肪の増加の一因。また、運動不足だと食事で摂ったエネルギーが消費されず中性脂肪が過剰となり、やがて内臓脂肪や皮下脂肪が増えるリスクが高まります。
アルコールの過剰摂取も、中性脂肪を増やす原因になります。アルコールはそれ自体が高エネルギーであることはもちろん、酔うと食欲を抑えにくくなるので、おつまみの食べ過ぎにもつながりやすいからです。
また、アルコールの過剰摂取は、アルコール性肝障害にもつながります。よく耳にする「脂肪肝(しぼうかん)」は、肝臓に内臓脂肪が過剰に蓄積してしまった状態のこと。脂肪肝は死亡原因にもなりえる病気です。
ストレスから逃れるために過食してしまい、中性脂肪が増える原因になることも。また、過剰なストレスを受けると、インスリンがもつ血糖値を下げる働きが低下。中性脂肪値にも悪影響を与えます。
年齢が上がるにつれて中性脂肪値が上がる原因のひとつは、基礎代謝の低下。年齢を重ねるほど、食事と運動を意識することの重要性が高まります。また、女性は閉経を迎えると、ホルモンバランスの影響で脂肪がつきやすくなります。
誤解されがちですが、中性脂肪自体は、人が活動するために必要なエネルギー源のひとつで、決して悪いものではありません。しかし、体内で増えすぎることで肥満を引き起こしたり、生活習慣病などの原因になります。
また中性脂肪が増えすぎると、LDL(悪玉)コレステロールが増加し、HDL(善玉)コレステロールが減少します。血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールの値が基準値から外れて高い状態が、冒頭で触れた「脂質異常症」です。
血管の壁にコレステロールなどが溜まってしまったり、高血圧で血管に負担をかけ続けたり、血液がドロドロの状態を放置したりすると、動脈硬化のリスクも高まります。
一方で、中性脂肪値が適正値よりも低すぎるのも問題です。
中性脂肪値が低い=体内に蓄えられたエネルギーが少ない状態なので、疲れやすくなったり、体温維持がうまくできずに低体温や手足の冷えなどに悩まされたりするリスクが高まります。遺伝や体質によって中性脂肪値がもともと低い人もいますが、そうでない場合、なんらかの疾患が原因で中性脂肪値が低いケースもあり注意が必要です。
また、脂質・糖質を極端に抑える食事制限や、アスリート並みの過度な運動も、低すぎる中性脂肪値につながります。減量中でも栄養バランスを意識した食事を朝昼晩の3回摂り、食生活の乱れに気をつけてください。
次のブロックでさらに詳しくお伝えします。
中性脂肪値を下げるためにはダイエットが有効ですが、食生活のリズムや栄養バランスを無視するような過度な食事制限は禁物。肌荒れや抜け毛、風邪をひくなど、健康面にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。女性の場合は、体脂肪が減りすぎるとホルモンバランスが崩れ、生理不順や無月経につながることもあるでしょう。
では、増えすぎた中性脂肪を減らすには、具体的にどのように生活を改善すればいいのでしょうか? ここからは、家庭でも実践しやすい中性脂肪を減らす習慣をご紹介します。
中性脂肪は、食事の影響を受けやすい性質をもっているため、食生活の改善が大きなポイント。具体的には、中性脂肪を増えやすい食事(脂質・糖質が多い食べ物)を控えめにしましょう。油を使った料理をつくるときは、飽和脂肪酸を多く含むバターなどの動物性油脂ではなく、不飽和脂肪酸を多く含んだ植物油脂を活用するのがおすすめ。
また、コレステロール排出に役立つ食物繊維を多く含んだ食べ物を摂取するのも効果的です。ごぼうやほうれん草などの野菜、アボカドやバナナなどの果物には、食物繊維が多く含まれています。
それから、食べ方を意識することも大切です。ゆっくりとよく噛んで、腹八分目を心がけてください。
「中性脂肪が増える原因」でもお伝えしましたが、アルコールの摂り過ぎも、中性脂肪を増やす原因のひとつ。
1日の飲酒量の目安は、日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本程度。また、週に1、2日は休肝日を設けるといいでしょう。
なお、おつまみは揚げ物など高カロリーなメニューは控え、カロリーが低い食材、または鶏のささみやレバーなど肝臓の働きを助ける食材を選んでみてください。
適量の飲酒は、心疾患などのリスクを減らすとも言われています。節度を守って楽しんでくださいね。
食生活の改善に加えてぜひ取り組んでほしいのが、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動です。
頻度としては週に数回行い、運動を日頃の習慣にして継続していくことが大切です。
仕事などで忙しくて時間を確保できない方や、運動不足で本格的に体を動かす準備ができていない方は、ひと駅分歩く・駅構内や会社では階段を使う・早歩きを意識するなど、できることから始めてみましょう。
また、有酸素運動とあわせて筋力トレーニングも行うと、より効果的です。基礎代謝が上がり、体脂肪が減りやすくなりますよ。
睡眠時間が短いと、睡眠中に分泌されるホルモンのバランスが崩れ、食欲の暴走が起こりやすくなります。食べ過ぎによる中性脂肪の上昇を防ぐため、睡眠時間をしっかりと確保することも重要です。
中性脂肪そのものは体に欠かせない大切な要素のひとつですが、増えすぎてしまうと、さまざまな体の不調につながる可能性があります。
中性脂肪が増える原因の多くは日頃の生活習慣なので、中性脂肪値が高めの方は、ぜひ今日から飲酒を含めた食生活や運動習慣などを見直してみてください。また、ストレスを溜めないこと、睡眠時間をしっかりと確保することも重要です。
できる範囲から少しずつ生活習慣を改善し、適切な中性脂肪値を維持してくださいね。
株式会社タニタ 開発部 佐野あゆみ
2011年タニタに入社。体組成計に搭載する新指標の作成を担当するほか、新規生体センシング技術を利用した新商品の開発に従事している。医療機関や他企業との共同研究を活発に行いながら、お客様の声を商品開発に活かせるように日々心掛けている。
参考文献:
山岸良匡,「脂質異常症」,厚生労働省e-ヘルスネット,2022年
池田義雄,「タニタ式カラダのひみつ」,三笠書房,2012年
池田義雄,「生活習慣病講座―おいしく食べる楽しくはかる」,産経新聞社,2004年
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