食事

昨晩のお酒、本当に抜けてる? 知っておきたいアルコールの基礎知識

2023.12.08

コロナ禍を経て迎える、今年の年末年始。飲み会がぐっと増える方も多いのではないでしょうか? そんな飲みの席を健康的に楽しむためには、「お酒との上手な付き合い方」を知っておくことがポイントになります。 今回は、アルコール検知器の企画・開発に携わる量産設計部の金成(かなり)と新商品推進部の佐川が、飲酒後のからだの変化やその確認方法、上手にお酒を飲むコツなどをご紹介します。

プロフィール

株式会社タニタ秋田 量産設計部 金成 伸治
2009年入社。開発部で粉末冶金技術を用いた重量センサーの開発や脂肪代謝の可視化技術の研究に従事した後、量産設計部に異動。アルコール検知器をはじめ、ガスセンサーを用いた商品の企画・開発に携わる。アルコール検知器のフラッグシップモデル「FC-1500」や、コンパクトかつ低コストの「FC-800」「FC-810」の開発も担当している。

株式会社タニタ 新商品推進部 / アルコール検知器協議会(J-BAC)幹事 佐川 清志
2001年入社。技術部門でヘルスケア商品の設計・開発に従事した後、営業部門を経て、現在は企画部門に所属。アルコール検知器を含めたヘルスケア商品全般のサービス企画に携わっている。また、アルコール検知器協議会幹事として、アルコール検知器の普及啓発に努めている。


お酒を飲んだ直後、あなたのからだに起こること

佐川:
「お酒はからだに悪いもの」というイメージをおもちの方もいらっしゃるかと思いますが、「適度な飲酒量」を守れば、決してそんなことはありません。むしろ適度な飲酒は、胃液の分泌を促して食欲を増進したり、血行を促進したりします。さらには、精神的な緊張をほぐしてストレスを緩和したり、コミュニケーションを促進したりといった効果も期待できます。

 

ただし、過剰な飲酒はからだに悪い影響をおよぼします。急性アルコール中毒は、その代表的な例です。

 

また、アルコールによって脳の大脳皮質の働きが弱まると、「感情のストッパー」がうまく機能しなくなります。すると、本能をつかさどる辺縁系(へんえんけい)の働きが相対的に強くなり、感情の起伏が激しくなる可能性が高まるのです。

さらに、小脳にアルコールの影響がおよべば、ろれつが回らなくなったり、千鳥足になったりすることも。海馬(かいば)が影響を受ければ、記憶を失ってしまうこともあるでしょう。

 

「適度な飲酒量」ってどれくらい?

厚生労働省は、1日の節度ある適度な飲酒量を「純アルコール20g」としています。

この純アルコールの量は、「飲酒量(ml)×アルコール濃度×0.8(比重)」で簡単に計算できるので、いつも選ぶお酒と量をぜひ確認してみてください。たとえば、アルコール度数5%のビールなら500ml、アルコール度数12%のワインならグラス2杯(200ml)で「純アルコール20g」です。

▼1日の節度ある適度な飲酒量

飲酒量(ml)×アルコール濃度×0.8(比重)=20

飲酒後、何時間でアルコールは抜ける?

佐川:
私たちがアルコールを摂取すると、体内で酵素が働いて、アルコールを「アセトアルデヒド」に分解します。そのアセトアルデヒドは、「ALDH2(アルデヒド脱水素酵素)」という酵素によってさらに「酢酸」に分解され、最終的に「水」と「二酸化炭素」になって、尿や汗、呼気として体外に排出されます。この一連の流れを完了すると「アルコールが抜けた状態」になります。


適度な飲酒量といわれる純アルコール20gを分解・排出するのにかかる時間は、男性で4時間、女性で5時間ほどです。ただし、速度には個人差があり、その日の体調によっても変わるので、あくまで目安と考えてください。

日本人の約半分はお酒に弱い!?

多くの方は、お酒を飲んだ後に吐き気や頭痛を感じた経験があると思います。

その原因は、先ほどお話したアセトアルデヒド。体内でのアルコール分解によって作られますが、実はこれが人体にとっては猛毒。さまざまな不快症状を引き起こす原因になります。


一般的に“お酒に強い人”というのは、このアセトアルデヒドを分解する「ALDH2」の働きが強い人のことをいいます。

ALDH2がどれくらい働くかは、遺伝子によって決まっています。そして、日本人の多くは、ALDH2の働きが弱い、もしくはほとんど働かないことがわかっています。具体的には、ほぼ働かない人は日本人全体の1割、働きが弱い人は3~4割といわれています。

 

ALDH2の働きはパッチテストで調べられるので、ぜひ一度試してみてください。ちなみに、アルコールの手指消毒で皮膚が荒れやすい方は、お酒に弱い体質である可能性大です。

飲酒後、風呂やサウナで汗をかけばアルコールが抜ける?

「汗をかくとアルコールが抜ける」という話をよく耳にしますが、汗や尿で排出されるアルコールの量は摂取量の5~10%。入浴やサウナ、運動などで汗をかいても短時間でアルコールが代謝されることはありません。
それどころか、アルコールには利尿作用があるので、無理に汗をかこうとするとからだから水分がどんどん抜けてしまい脱水症状になる恐れも……。

リスクが大きいわりにアルコールを代謝させる効果は小さいので、飲酒後の長風呂やサウナはおすすめできません。

お酒を飲んだ後、水を飲めばアルコールは薄まる?

残念ながら、お酒を飲んだ後に水を飲んでも、アルコールの分解速度が速まったり、血液中のアルコール濃度(この後で詳しくご紹介します)が薄まったりはしません。「適度な飲酒量」を守ることが重要です。

 

一方、飲酒時にはしっかりと水を飲むよう心がけてください。

脱水症状の予防につながるだけでなく、「胃の中のアルコール濃度」が下がり、血中アルコール濃度の急上昇を防ぎやすくなります。これはつまり、血中アルコール濃度が急上昇して脳に悪影響がおよぶ「急性アルコール中毒」のリスクを低減できるということです。


からだにアルコールが残っているかどうか知る方法はある?

金成:
「酔いの程度」を表す指標には、「血中アルコール濃度」と「呼気中アルコール濃度」の2つがあります。

お酒を飲むと、アルコールは胃や小腸からそのほぼすべての量が血液に吸収されます。そうして血液にたまったアルコール量を示すのが、「血中アルコール濃度」です。

また、血液中のアルコールの一部は肺から排出され、呼気として体外に出ていきます。この吐く息に含まれるアルコール量のことを、「呼気中アルコール濃度」といいます。


血中アルコール濃度と呼気中アルコール濃度には相関があり、血液中の濃度が高ければ、比例して呼気の濃度も高くなります。つまり、どちらかひとつを測定すれば、からだにアルコールがどれくらい残っているかがわかるのです。

血中アルコール濃度は血液検査で調べるのに対し、呼気中アルコール濃度はアルコール検知器に息を吐くだけで手軽に測定できます。


上手にお酒と付き合うために

佐川:
お酒とうまく付き合うには、やはり適量を守ることが大切です。お酒の席を楽しみつつも、自分が今どれくらいアルコールを摂取しているかをできるだけ正確に把握し、飲みすぎないように注意してください。

私自身もお酒が大好きなので「もう一杯飲みたい」という気持ちはよくわかるのですが(笑)、からだへの負担を考えて量を意識しています。

 

金成:
酔いの程度は、ときに体感とは異なるものです。お酒を飲んだ翌朝、ぜひアルコール検知器を使ってみてください。自分では「アルコールは抜けている」と感じているのに、呼気から検知されて驚く方もいらっしゃると思います。

前日のお酒が残ったまま仕事をしているせいで、本来のパフォーマンスが発揮できていない方もいるかもしれません。飲酒した日の翌朝は、起床後うがいをして水を一杯飲み、アルコール検知器を使う。

体温計を使うようにアルコール検知器を使う習慣をつけ、自身に合った飲酒量を理解し、飲酒習慣を見直すきっかけにしてもらえたらうれしいです。

  • 本コラムに記載されている情報は掲載日時点のものです。内容は予告なしに変更される可能性があります。あらかじめご了承ください。

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